かざみどり ――3――


 変な夢を見ていた。
 小さな子供が泣いている。
 泣いてたからどうにかして、泣きやめばいいって思ってたんだ。
 泣きやませないといけないって、思ったんだ。

 泣いてばかりいることは、とても哀しいから。

 

「あれ? 俺、どーしてたんだっけ?」

 こんな所で寝てたっけなあ?
 辺りを見回せば、レーム帝国の城下町の近くの森だった。猛獣がいないとしても、昼寝をするほど安全な場所でもない。ここに来た経緯を思いだそうとしてみたけど、どうにも思いだせなかった。

――っと。こんなことしている場合じゃなかった。

 魔力操作をヤンバラから習っている最中だ。一刻でも早く魔力操作を完全に自分のものにして、俺は行かないといけない。
 守れなかった国を取り戻す為に。それと――。

――誰だっけ?

 泣いている奴らがいたような気がする。そいつらを俺は助けないといけないって思うんだけれど、それが誰だったのかが思いだせない。

「うーん」

 しばらく頭をひねって思いだそうとしていたけど、どうにも俺は思いだせなかった。諦めて顔を上げる。
 国を取り戻すことも、その誰かを助けることも、この道を歩いて行けばどうにかなりそうな気がした。
 きっと、色々とやっている内に忘れたことも思いだせるだろう。

 思いなおして、俺は歩き出した。
 少しでも前に、少しでも早く、進む為に。