先の見えない夜

――なんども、なんども考えた。でも、駄目だった。いくら考えても俺には答えが出なかった。

 

 

 ぱちぱちと枯れ枝が燃えている。日はとっくに落ち、辺りは真っ暗で静まり返っていた。聞こえてくるのは虫の音と風の音。空を見上げると天蓋には満点の星空が刻まれている。

――目的もある。……今だって考えている。でも、それを以前ほど望んでいるのかはもうわからなくなってきていた…か。

 レビンはあくびをして目を擦ると、炎をぼんやりと見つめていた。見張り番である。毎日交代制で見張り番を組んでおり、今日はその日だった。キャンプの場所は主要街道を少し外れた森の中にあった。

――オステカの外に出るのって久しぶりだよな……。

 焚き火を見つめていると、レビンの脳裏には忘れかけていた昔がよぎった。オステカの門番となる前、ユーフォリアと彷徨っていたあの時期。立ち寄ったエルスバーグ共和国とその崩壊。そして、何の為に自分がここにいるのかも。

 レビンが後ろをちらりと振り返ると寝袋にくるまったダネットらが気持ちよさそうに眠っている。起きているのはレビン一人だった。

――今、やろうと思えばやれるんだろうな。

 そんな考えがレビンの頭を掠めた。それは造作も無いことだった。首元に刃物を当てて静かに引くだけでいい。それだけで、簡単に命は終わる。それだけで、自分の目的は達成される。それだけで、全てが終わる。

 腰につけた短刀を握って、レビンはため息をついた。

――いや、駄目だ。こいつらにはまだヌトラを倒してもらわねえと……。

 自分に都合の良いようにことを運ぶためにと、頭の中で呟いて実行に移したことは一度もなかった。短刀を握ることは、自分の目的を忘れないためでもあった。旅をしていると自分がどうしたいのかをレビンは時々見失いそうになっていた。

――もしも、俺がただのレビンだったら……。きっと楽なんだろうな。

 レビンとしての自分と、世界を喰らう者としての自分。どちらも同じ自分であるのに、置かれた境遇はかなりの違いをもっていた。しかし、犯した罪は同じだ。本質がひとつである以上、どちらも自分であることを認めないといけない。

――やっぱバカだよな、俺。この関係がずっと続けばいいだなんて、そんなありえないこと。

 視線をまた焚き火に移して、ため息をついた。

 暗い夜は静かにふけていく。