いたらいたで大変だけど、いなくても不安になる

 

 ルルーやパノッティ達に連れられてアルルが部屋の外に出ると、同じように目を覚ましたのかラグナスが机に座って待っていた。

「ラグナスも目を覚ましたんだ! あれ? シェゾはどうしたの?」

自然とアルルの眼はもう一人いるはずのパーティのメンバーを探した。しかし、リビングと思しき部屋で待っていたのはラグナスだけだった。
アルルの問いにそっとラグナスは表情を曇らせた。その様子から最悪の状況を思い浮かべて、アルルも思わず言葉を失う。

「え……? ま、まさか……」
「もう一人の兄ちゃんならあっちの部屋で寝ているよ。でも、一番ひどいけがをしていたから……、まだ目を覚まさないと思うけど」

ラグナスの代わりに答えたのはパノッティだった。同じように浮かない顔をしてはいたけれど、アルルはほっと息を抜いた。それはルルーも同じだったらしい。

「なんにせよ生きているのね。まったく、こんな時にもいらない心配をかけるんだから」

口では憎まれ口を叩いているものの、ルルーは口元に苦笑いを浮かべた。そして、そのままテーブルの席に着く。パノッティや博士にデウスもルルーに次いで席に着いた。

「どうしたの?」

アルルだけがまだ席に着こうとしていないので、ルルーが振り返って尋ねた。アルルの視線はパノッティが先ほど指差した部屋に釘づけになっている。

「あの……。話をする前にちょっとだけシェゾを見て来ていい?」

ちょっと間をおいて、アルルは答えた。

 

――良かった……。生きている。

ベッドに横たわっているシェゾが規則正しく呼吸を繰り返しているのを見て、アルルはほっと胸をなでおろした。
時折苦しそうに顔をゆがめているけれど、少なくとも死ぬ死なないといった峠はとっくに越えていそうだった。

あのハルマゲとの戦いの中で誰の目に見ても一番重症だったのは、シェゾだった。
あの時、ラグナスが言い淀んだ時に思い浮かべたのは床に広がる血の染みとその中に横たわっているシェゾの姿だった。
今も、一瞬死人かと見間違えるほど白くなった肌で、横たわって動かない。
それでも生きていることを確認できてアルルはようやく安心できた。

「早く目を覚ましてね……。ボクたち、あっちで待っているから」

そう言って、アルルはベッドのそばを離れていった。